遠視とは?近視・老眼との違いや原因について解説
更新 2023/04/28
投稿 2022/11/06
我妻 三朗 監修
更新 2023/04/28
投稿 2022/11/06
目 次
遠視と聞くと「遠くは見える」とイメージされる方もいるかもしれません。反対の近視は、「遠くは見えにくく、近くなら見える」というイメージがあるためです。
しかし、遠視の見え方は重度ともなると近くだけではなく、遠くも見えないことが珍しくありません。焦点が合わないことで全体的にピンボケしたようになるためです。遠視を補正するには、メガネにより焦点が合うように調整する必要があります。
また、子供の遠視については年齢が若いほど治療法の効果が高まるとされているため、疑われる場合はすぐにでも眼科医に相談しましょう。
本記事では、遠視の仕組みや近視・老眼との違い、補正方法について解説します。
1. 遠視とは何?
遠視とは、目から入った光の焦点が網膜の奥にできてしまう状態のことです。網膜に焦点が合わないため、うまく像を結べずクリアに見ることが難しくなります。
ここで、遠視とはどんな見え方がするのかと疑問に思う方もいることでしょう。軽度であれば、調整機能を働かせることで遠くも近くも見ることが可能です。しかし、重度となるとピントが合わないため、全体的にピンボケしてしまい近くも遠くも見えにくくなります。
遠視の主な原因は、眼軸(がんじく)が短いことと、ピント調整が弱いことの2つです。
・眼軸(がんじく)が短い
眼軸とは、目の表面である角膜から目の奥にある網膜までの距離のことです。眼軸が短いと正常な位置より網膜が前にあることを意味するため、焦点が網膜の奥にできやすくなります。このように、眼軸が原因の遠視は「眼軸遠視」と呼ばれます。
・ピント調整が弱い
網膜に焦点を合わせるためには、目のレンズの役割を果たす水晶体の働きが重要になります。水晶体の厚みを変えることで、焦点の位置を変えられるためです。この水晶体の厚みを調整する機能が弱く、必要以上に薄くなると遠視となります。ピント調整に問題を抱えている場合は「屈折性遠視」と呼ばれます。
1-1. 近視との違い
近視とは、焦点が網膜の前にできてしまうことで遠くが見えにくくなることです。つまり、遠視と近視の違いは、焦点が網膜の前か後ろのどちらかにできるかです。
近視は遠くを見ることが難しく、近い距離を見やすいのが特徴となります。そのため、重度になるほど、ピントの合う距離がどんどんと近くなります。
近視の原因は、遠視と反対に眼軸が長いことやピント調整が強すぎることです。
例えば、眼軸は伸びてしまうことがあります。すると、焦点が合わなくなり近視の原因となるのです。また、水晶体の調整力が強すぎる場合も網膜の前に焦点ができてしまいます。
眼軸を縮める方法はないため、近視の治療方法はメガネで補正する方法が一般的です。
1-2. 老眼との違い
老眼とは、年齢を重ねるほど水晶体が硬くなったり、厚みを調整する機能が弱くなったりすることで起きる目の老化現象です。老眼となると、近くを見る際に水晶体を十分な厚みにできず、網膜の奥に焦点ができてしまいます。そのため、近くが見えにくいといった症状がでるのです。
遠視と老眼は近くが見えにくいという特徴で一致していますが、原因は大きく異なります。
2. 遠視の症状
遠視は、裸眼で生活できる方であっても眼の疲れ(いわゆる眼精疲労)や肩こり、頭痛といった症状がでる場合もあります。その理由は、裸眼に焦点を合わせるために、水晶体を厚めの状態に維持することで目に疲れがたまるからです。
また、軽度の遠視の大人は、ピント調整機能が衰えることで老眼の症状が早くにでやすいという特徴もあります。「最近、近くが見えにくい」と感じる方は、遠視・老眼の初期症状の可能性もありますので眼科受診がおすすめです。
子供の場合は、幼少期に遠視だと「見る機能」の正常な発育に影響することもあります。例えば、以下の症状がある場合は、うまく見えていない可能性がありますので注意しましょう。
- 読書や勉強を続けるのが苦手
- 集中力が続かない
- 目を細めて見ている
- 目の疲れを訴える
- お絵描きや工作が長続きしない
上記のような症状を確認できる場合は、眼科での検査をおすすめします。適切な治療や、メガネによる補正をすることで症状が落ち着く可能性もあるためです。
3. 遠視が子供に及ぼすリスク
幼少期から遠視などの理由でうまく見えないことは、子供の「見る機能」の発育に大きな影響を及ぼします。重度の遠視の場合は、うまくピントが合わないため遠くも近くも見えません。このような状態で生活を続けると、「弱視」「斜視」となるリスクが高まります。
治療のためにも、子供の場合は早めに遠視であると気づくことが重要です。
しかし、新生児は遠視の状態で生まれてくるのが普通で、成長とともに「見る機能」も発達します。遠視の子供は生まれた状態から遠視のため、これが普通の見え方として受け入れているため気づきにくいのです。
そのため、前章で紹介した症状が見られた場合は、早期の眼科受診が大切になります。
3-1. 弱視
弱視とは、メガネやコンタクトレンズで補正しても視力が0.3未満のことを指します。弱視の場合は、見る機能そのものに問題を抱えているため、メガネなどで焦点を調整してもうまく見えないためです。
遠視が弱視の原因となるのは、視力が発育する幼少期に見えないことで「見る機能」の発達に悪影響がでるためです。
しかし、遠視だからといってあきらめる必要はありません。子供の弱視であれば治療や訓練により回復することもあるためです。ただし、視力は10歳頃までには機能が完成してしまうため、早期に治療を開始するほど視力が改善しやすいといわれています。
3-2. 斜視(しゃし)
斜視とは、見たい方向に対して片方の目が違う方向を向いている状態のことです。遠視が原因の場合は、近くを見る際に内斜視と呼ばれる片方の目が内側に寄りやすくなります。
その理由は、遠視の場合はピント調整機能を強めなければうまく見えないためです。そのため、近くを見るときには、目の向きを変えることでピントを調整するようになってしまうのです。
斜視はものが重なって見える複視の原因にもなり、片方の目が弱視になる原因にもなります。
4. 遠視の治療方法
遠視は、基本的に治す治療方法がありません。そのため、大人であれば眼科受診をして、適したコンタクトレンズ・メガネで視力をカバーするのが一般的です。遠視用のメガネをかけることで目の負担を軽減できるため、眼の疲れ(いわゆる眼精疲労)・目の痛み・頭痛・肩こりなどの症状が緩和できます。
子供であれば、早期に適切な治療をすることで視力が回復することもあります。また、「弱視」「斜視」のリスクを抑えることも可能です。
ただし、子供の視力は10歳頃までに完成するといわれていますので、6歳~9歳までに遠視を見つけ治療することが大切になります。子供の遠視に対しての治療方法は、メガネによる補正で「見る機能」の発達を促す方法や、アイパッチ・オクルパッドなどを利用した方法があります。
視力の成長が止まってしまうと、それ以降は治療の効果が期待できなくなるとされていますので、早期発見・早期治療が大切です。
5. 遠視・近視・老眼の補正方法
遠視・近視・老眼の補正方法は、基本的に適した度数のメガネをかけることです。しかし、「原因が異なるのに同じメガネでなぜ補正できるの」と疑問に思う方もいることでしょう。その答えは、メガネについているレンズに違いがあるためです。以下よりそれぞれのレンズの違いについて解説します。
5-1. 遠視の補正方法
遠視の補正方法は、凸レンズのメガネをかけることです。凸レンズとは中心部が膨らんだレンズのことで、焦点を前に調整する役割があります。メガネやコンタクトレンズの度数の表記で「+1.0D」「+2.0D」などのように、「+」がつくと凸レンズとなります。
5-2. 近視の補正方法
近視の場合は、焦点を後ろにずらしたいので凹レンズを使用します。凹レンズは、中心部が最も薄く外側になるほど分厚くなるレンズのことです。度数を表す際には「-1.0D」のように、「-」がつくと凹レンズの意味となります。
5-3. 老眼の補正方法
老眼は、ピント調整機能が衰えることで近くが見えにくいのが特徴です。そのため、手元のピントを合わせるために凸レンズが使われます。ただし、遠くも近くも見えるようにするために、同じレンズ内に複数の焦点がある二重焦点レンズや三重焦点レンズなども使われます。
6. メガネを利用して症状を緩和
遠視は網膜の後ろに焦点ができるために起こります。遠視は根本的な治療方法がないため、基本的には凸レンズのメガネをかけて補正するのが一般的です。
軽度の遠視であれば、裸眼でも問題なくすごせる方もいます。しかし、ピント調整機能を酷使することにより、眼の疲れ(いわゆる眼精疲労)・目の痛み・頭痛・肩こりの症状に悩まされている方もいるでしょう。
遠視・近視・老眼は、適切な度数のメガネをかけることで見やすくなるだけではなく、このような症状も緩和できます。まずは、自分の目の状態を確認するためにも眼科受診をおすすめします。
我妻 三朗 監修
店頭に並んだメガネは完成品ではありません。ご自分の目やお顔に最適に調整されて、初めて完成します。眼鏡作製技能士は、世界に一つのあなただけのメガネをお仕立てします。眼鏡作製技能士について詳しく見る。
以下の記事も読まれています