紫外線量によって色が変わる!調光レンズの特徴と向いている人を紹介
更新 2025/06/17
投稿 2025/02/17

我妻 三朗 監修
更新 2025/06/17
投稿 2025/02/17

目 次
調光レンズとは、周囲の紫外線などの光量に応じてレンズ色が変化するレンズのことです。紫外線量の少ない室内ではクリアなレンズに、紫外線量の多い日中の野外では濃い色のレンズに変化します。
つまり、調光レンズ1本でメガネとサングラスの2つの役割を果たしてくれるのです。そのため、アウトドアシーンやおしゃれなアイウェアを身につけたいプライベートなシーンなどで活躍します。
一方で、レンズの色は手動で調整できないため、使用するシーンによっては注意が必要です。調光レンズの仕組みやメリット、デメリットを正しく把握して、自分に向いているのか判断をすることが大切です。
そこでこの記事では、調光レンズの基礎知識や向いている人、向いていない人を分かりやすく解説していきます。
- 調光レンズの基礎知識
- 調光レンズと偏光レンズ・ミラーレンズとの違い
- 調光レンズを使用するメリット
- 調光レンズを使用するデメリット
- 調光レンズが向いている人は?
- 調光レンズが向かない人は?
- 調光レンズを選ぶときの3つのポイント
▼この記事で分かること
この記事を最後まで読めば調光レンズとはどのようなレンズか把握でき、使用するべきか判断できます。自分に合うサングラスを見つけるためにも、ぜひ参考にしてみてください。
1.調光レンズの基礎知識
冒頭でも触れたように、調光レンズとは周囲の紫外線などの光量に応じてレンズの色が変化するレンズです。紫外線量が多いとレンズの色が濃くなり、紫外線量が少ないとレンズの色が薄くなります。
では、紫外線量が多いのは、どのような場面でしょうか?紫外線は太陽光に含まれる波長の一つなので、太陽を浴びるアウトドアシーンではレンズの色が濃くなります。例えば、日中のサイクリングや野外スポーツ、野外でのバーベキューなどではレンズの色が濃くなり、眩しさを抑えられます。
一方で、室内に入ったり日が沈んだりすると、周囲の紫外線量が大幅に減ります。すると、レンズの色は薄くなり通常のメガネと変わらない見た目に変化します。
このように、周辺の紫外線量に応じてレンズの色が変化するのが調光レンズの大きな特徴です。次の章では、調光レンズの色が変化する条件をもう少し詳しく見ていきましょう。
【紫外線だけでなく可視光線に反応する調光レンズも登場している】
調光レンズは紫外線量に応じてレンズの色が変化するタイプが主流ですが、最近は可視光線にも反応するレンズが登場しています。可視光線と紫外線の両方に反応することで、色の変化の速度アップや精度の向上が見込めます。
1-1.色が変化する条件
調光レンズは、ハロゲン化銀などの感光物質により色を変化させます。ハロゲン化銀は紫外線が当たると分子が反応し、ハロゲンと銀の可逆的結合が起きます。簡単に言うと、紫外線量に応じてハロゲンと銀が結合と分離を繰り返します。そのときに、レンズの色が変化する仕組みです。
この仕組みは「紫外線依存性」と「温度依存性」の2つの特性があります。
紫外線依存性 | 温度依存性 |
---|---|
紫外線量が多いとレンズの色が濃くなり、紫外線量が少ないとレンズの色が薄くなる | 温度が高いとレンズの色が薄くなり、温度が低いとレンズの色が濃くなる |
紫外線依存性とは、調光レンズの特徴である紫外線量に応じてレンズの色が変化することを指します。
温度依存性とは、温度が高いとレンズの色が薄くなり、温度が低いとレンズの色が濃くなる特性のことです。つまり、調光レンズは周辺の紫外線量と温度に応じて色が変化することになります。
例えば、太陽光が降り注ぐ日中の海辺で調光レンズを使うとしましょう。冬と夏のどちらでも基本的にはレンズに色はつきますが、気温の低い冬のほうがより濃さが出ます。
このように、調光レンズは紫外線量に応じて色が変化することが基本ですが、温度によっても変化することを念頭に置いておきましょう。
1-2.調光レンズの種類
調光レンズには、下記の2つのタイプがあります。
概要 | 特徴 | |
---|---|---|
レンズにコーティングをするタイプ | レンズの表面にハロゲン化銀などの感光物質をコーティングして仕上げるタイプ | コーティングが剝がれると調光機能を失う |
レンズに練り込むタイプ | レンズ自体にハロゲン化銀などの感光物質を練り込んで製造するタイプ | 調光時に色ムラが出やすい |
レンズにコーティングをするタイプは、コーティングが剝がれると調光機能が失われます。傷や擦れに注意をして扱う必要があります。
また、レンズに練り込むタイプは、調光時に色ムラが出やすいデメリットがあります。メガネのレンズは厚みが均一ではないので、色を合わせることが難しいためです。それぞれ一長一短があるため、扱いやすさや見た目を考慮して選択するといいでしょう。
また、どちらのタイプも視力補正機能を備えることもでき、メガネとサングラスの両方の性能を1本でまかなうことが可能です。
1-3.調光レンズの寿命は2~3年
調光レンズの寿命は、一般的に2~3年だと言われています。紫外線による可逆的結合を繰り返すことで、性能が劣化していくためです。寿命を迎えたからと言って調光ができなくなるわけではなく、性能の劣化が起こります。
調光レンズは性能が劣化すると到達するレンズの色が薄くなる、室内に入ってもレンズにうっすらと色が残るなどの現象が起きます。これらの現象が起こったら、調光レンズの買い替え時期だと判断するといいでしょう。
2.調光レンズと偏光レンズ・ミラーレンズとの違い
調光レンズを検討するときに迷うのが、同じサングラスの仲間である「偏光レンズ」や「ミラーレンズ」ではないでしょうか?
種類 | 概要 | 向いているケース |
---|---|---|
調光レンズ![]() |
周囲の紫外線などの光量に応じてレンズの色が変化するレンズ | ・メガネとサングラスを2本持つ手間を省きたい人 ・デザイン性を重視したい人 |
偏光レンズ![]() |
光の乱反射をカットするレンズ | ・眩しさやギラつきが気になるシーンで使いたい人 例:ゴルフ・釣り・ウィンタースポーツ・マリンスポーツなど |
ミラーレンズ![]() |
レンズの表面に反射加工を施したレンズ | ・スポーツなど表情を隠したいシーンで使いたい人 ・ミラーレンズのデザインが好きな人 |
ここでは、調光レンズと偏光レンズ、ミラーレンズの違いを解説していきます。
2-1.偏光レンズとの違い
偏光レンズとは、光の乱反射をカットするレンズのことです。日中の海の水面や一面の雪景色を見たときに、照り返しで「眩しい」「ギラつきがあり遠方が見えない」などの体験をしたことがある人は多いのではないでしょうか?
偏光レンズは眩しさやギラつきの一因となる乱反射をカットし、明瞭な視界を確保できるところが特徴です。
偏光レンズが乱反射をカットできる理由は、2枚のレンズの間に乱反射を遮る偏光膜を挟み込んでいるからです。調光レンズは偏光膜を挟み込んでいないため、眩しさやギラつきなどの乱反射を抑える機能は備わっていないのです。
調光レンズは紫外線量が多いシーンでレンズのカラーを濃くして、眩しさを抑えることしかできません。レンズのカラーの濃さの調整は意図的にできるものではないため、場合によっては眩しさや見にくさが残ることも考えられます。
一方で、偏光レンズはレンズの色が変化することはないので、使用するシーンは限定されます。釣り、ウィンタースポーツ、マリンスポーツ時などの眩しさや照り返しを解消したいという目的であれば、偏光レンズを選択したほうがいいでしょう。
偏光レンズの性能やメリットについては下記の記事で詳しく解説しています。
2-2.ミラーレンズとの違い
ミラーレンズとは、レンズの表面に反射加工を施したレンズのことです。まるで鏡のようにレンズに当たる光を反射をさせるため、一般的なカラーサングラスよりも光を通さないところが特徴です。
また、レンズの表面がミラーになっているため、自分の目が相手に見えることがありません。そのため、スポーツ時に表情を隠して相手から思惑を読まれないようにする方法としても使われています。
ミラーレンズ特有の反射加工は、調光レンズには施されていません。調光レンズでは色が濃くならない限り目元が見えますし、ミラーのように光を跳ねのけることもできません。
ミラーレンズのデザインを好む人や相手から目元が見えないようにカバーしたい人は、ミラーレンズを選択したほうがいいでしょう。
3.調光レンズを使用するメリット
調光レンズを使用するメリットとしては、次の3つがあります。
調光レンズが自分に合っているのか判断するためにも、あらかじめチェックしてみましょう。
3-1.サングラスとメガネの2役を果たせる
調光レンズは、紫外線量に応じてレンズの色が変化することが大きな強みです。1本あればシチュエーションによって使い分けができるため、サングラスとメガネの両方を購入し複数本を携帯する必要がありません。
例えば、普段から視力補正(視力矯正)のためのメガネをかけている人は、野外でサングラスを使いたいとなると2本を持ち歩く必要がありました。旅行やアウトドアイベントなどでは意外と荷物になり、手間を感じていた人もいるでしょう。
調光レンズなら室内では視力補正(視力矯正)用のメガネとして、野外では眩しさを和らげるサングラスとして使えます。室内と野外では見た目もしっかりと変化するため、別のアイテムのように扱えます。このように、1本で2つの役目を果してくれるのは調光レンズならではのメリットだと言えるでしょう。
3-2.紫外線から目を保護できる
太陽光は目に見える可視光線と、目には見えない紫外線、赤外線に分かれます。調光レンズは一般的には紫外線に反応し、紫外線の量によってレンズの色が変化します。
目に紫外線が入るとダメージを受けて、充血や角膜への傷、他の眼科疾患の原因となる可能性があります。紫外線量が年々増加している昨今では、目へのダメージを緩和する紫外線ケアが欠かせません。
調光レンズは紫外線量が多くなると自動的にレンズの色が濃くなるため、紫外線を含む強い太陽光から目を保護できます。また、レンズ表面にはUVカットコーティングを施しているケースがほとんどなので、レンズの色とUVカット加工の2つの側面から紫外線によるダメージを予防します。
3-3.おしゃれな雰囲気を演出できる
調光レンズは、シチュエーションに応じてレンズの色が変化するためおしゃれな雰囲気を演出できるところも大きな魅力です。通常のメガネやサングラスは、デザインが変化することはありません。
レンズの色によって、周囲に与える印象は大きく変わります。調光レンズは紫外線量に応じてレンズの色が変化するため、周囲から「おしゃれ」「雰囲気が変わった」などの嬉しい声が聞けるでしょう。
例えば、友人とお出かけをする日中の屋外ではサングラス、日が暮れるとフレームが際立つメガネに変化します。
調光レンズならコーディネートを楽しむアイテムとして、一役買ってくれます。
4.調光レンズを使用するデメリット
調光レンズのメリットが把握できたところで、気になるのはデメリットです。調光レンズのデメリットとしては、次の4つがあります。
調光レンズの使い方や保管方法に関わる注意点も含まれているため、事前に把握しておきましょう。
4-1.色の変化に時間がかかる
調光レンズは紫外線量に応じてレンズの色が変化しますが、急激に色が変化するわけではありません。発色スピードは数十秒ですが、退色のスピードには数分かかかることがあります(商品により時間差があります)。
例えば、野外でバーベキューをしており、レンズの色が濃いサングラスのような状態だったとします。コンビニエンスストアで買い物をしようと室内に入っても、すぐに通常のメガネのような色には変化しません。買い物が終わる頃に、やっとレンズの色が薄くなり視界が良好となるでしょう。
慣れている場所や安全性を確保できている場所であれば退色スピードが遅くても問題はありませんが、運転時には注意が必要です。
自転車や自動車の運転時にトンネルや地下駐車場など突然暗いに入っても、すぐにレンズの色が薄くなるわけではありません。トンネルや地下駐車場の暗さとレンズの濃さが相まって、一時的に見にくさを感じる可能性があります。
調光レンズの退色スピードを考慮して、危険を伴うシーンでは使用を避けるようにしましょう。
4-2.日傘や帽子との併用が難しい
調光レンズは紫外線が当たらないと色が変化しないため、紫外線をカットするアイテムとの併用が難しいです。具体的には調光レンズを装着し帽子や日傘などの紫外線をカットするアイテムを使うと、調光レンズまで紫外線が届かない可能性があります。
その結果、調光レンズの色が薄くなる、または変化しないなどの弊害が起こります。これを解消するには、可視光線でも色が変化する調光レンズを選択する必要があります。
- 日焼け対策のために帽子や日傘を併用したい
- ハイキングやサイクリングなど紫外線を遮る帽子を被るシーンで使いたい
という場合には、可視光線対応の調光レンズを選択してください。
4-3.レンズに傷がつくと調光機能が失われる
現在主流となっているコーティングタイプの調光レンズは、レンズに傷がつくと調光機能が失われます。傷や擦れが起きた部分の調光コーティングが剝がれてしまうためです。
コーティングが剝がれた部分はレンズの色が薄いときは目立ちませんが、色が濃くなると変化しない傷の部分がクッキリと浮かび上がります。調光レンズの見た目と性能が劣ってしまうので、レンズに傷をつけないように注意しましょう。
調光レンズに傷がつきやすい習慣としては、下記のようなものがあります。
- 調光レンズをメガネケースに入れずに保管する
- 調光レンズをポケットに入れて携帯する
- 調光レンズを装着したまま寝てしまう
- 調光レンズを頭に乗せた状態にする
とくに、保管時にポケットの中に入れたり机の上に置いたままにしたりすると傷がつきやすくなるので、専用のケースに収納する癖をつけましょう。
4-4.経年変化で退色する
この記事内の「1-3.調光レンズの寿命は2~3年」でも触れましたが、調光レンズは紫外線を浴びることで性能が劣化していきます。見た目で分かる性能の変化には、退色があります。
調光レンズを購入したばかりのころは野外で濃い色になったとしても、この色味をキープすることができません。経年変化とともに、レンズが濃くなる最大値の色が薄くなってしまうのです。
一例として上の表で説明をすると、調光レンズの購入時には10段階の色の変化があったとします。経年変化による退色とともに、購入から2~3年後には6段階分しか色の変化が起こらなくなります。その結果、最も濃い色が薄くなり、最も薄い色ではクリアに戻りにくく色が残るようになるのです。
また、調光レンズは経年変化による退色という性質があるため、片玉交換ができません。新しい調光レンズと古い調光レンズを組み合わせると、左右で色の差が出てしまいます。調光レンズが割れた、傷がついたという場合には、左右のレンズを同時に買い替える必要があります。
5.調光レンズが向いている人は?
調光レンズのメリットやデメリットが把握できたところで、調光レンズが向いているのか気になるところです。調光レンズが向いている代表的なケースとしては、下記の3つがあります。
なぜ向いているのか理由を踏まえて解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。
5-1.利便性を重視したい人
調光レンズは1本でサングラスとメガネの役割を果たしてくれるため、利便性を重視したい人に向いています。メガネとサングラスの2本を使い分けていると、次第に面倒になりどちらか一方を使わなくなることがあります。
調光レンズなら室内と室外を行き来しても、わざわざメガネをかけ替える必要がありません。持ち歩く手間とかけ替える手間の2つが省けるため、扱いやすくなります。
- アウトドアやスポーツが好きでメガネとサングラスを併用している
- メガネとサングラスの2本の使い分けが上手にできていない
- 旅行にメガネとサングラスを持っていきたいけれど荷物が増えて困る
と感じている人は、調光レンズを検討してみる価値があるでしょう。
5-2.サイクリングやウォーキングに使用したい人
アウトドアの中でも、サイクリングやウォーキング時に使うサングラスを探している人は調光レンズがおすすめです。
サイクリングやウォーキングは急な紫外線量の変化が少ないため、環境に応じて適切なレンズの色を維持しやすいです。例えば、日中にウォーキングをするときはサングラス、夜間のウォーキングはメガネとして明瞭な視界を確保できます。
万が一、トンネルや地下路などを利用して一時的に視界が暗くなったとしても、徒歩や自転車なら視界が確保できるまで立ち止まることが可能です。
- サイクリングやウォーキング時に使うサングラスが欲しい
- 日によってウォーキングの時間が変わるため、環境に応じて使いやすい色味のサングラスが欲しい
という場合には、調光レンズを検討してみてください。
5-3.プライベート用のおしゃれなサングラスが欲しい人
調光レンズは、レンズの色の変化を楽しみたい人にもピッタリです。他の種類のサングラスはレンズの色が変化することはないので、シチュエーションに応じてレンズの濃淡が変わるのは大きな魅力です。
プライベート用のおしゃれなサングラスとして1本持っていれば、周囲に差をつけるアイテムとなるでしょう。また、レンズの色の変化に応じて、メガネに合うファッションとサングラスに合うファッションの2通りを楽しめるところもポイントです。
- 普通のサングラスでは物足りない
- おしゃれのアクセントとなるサングラスが欲しい
- 周囲と被らないサングラスが欲しい
という場合にも、調光レンズが向いているでしょう。
6.調光レンズが向かない人は?
調光レンズが向かないケースとしては、次の4つが考えられます。
この3つのシーンで使用すると思ったような効果を得られなかったり危険を伴ったりするので、調光レンズの使用は避けたほうがいいでしょう。
6-1.自動車の運転時に使用したい人
調光レンズは、自動車の運転には不向きです。それは、次の2つの理由があるからです。
①自動車のフロントガラスには紫外線カット加工が施されている
現在、ほとんどの自動車のフロントガラスには、紫外線カット加工が施されています。調光レンズは紫外線量によって色が変化するため、自動車の運転時には通常のメガネと変わらない状態となります。
自動車を運転するときの眩しさやアスファルトの照り返し対策などに使用したい場合は、可視光線に対応している調光レンズや一般的なサングラスを検討したほうがいいでしょう。
②突然の環境の変化に対応できない
可視光線対応の調光レンズを選択したとしても、トンネルや地下駐車場など突然暗くなるシチュエーションは危険性が高いです。
「4-1.色が変化に時間がかかる」でも触れましたが、調光レンズの退色には時間がかかるためです。地下の駐車場に入って数分間はレンズの色は濃いままなので、見にくい状態が続きます。最悪の場合は事故につながる可能性があるので、自動車の運転には使用しないほうが無難です。
【自動車の運転に使用できるサングラスには基準がある】
自動車の運転に使用できるサングラスは、JIS(日本工業規格)で下記のように定められています。
昼間の運転は、視感透過率が8%を超えていること。夜間の運転には、視感透過率が75%以上であること。運転用または道路での使用に適するために、赤、黄、緑、青の色を識別できる色調であること。
可視光線に対応している調光レンズであっても、視感透過率(レンズが目に見える光をどれくらい通すのか数値化したもの)が8%を超えていなければ昼間の運転には使用できません。
調光レンズは紫外線や可視光線の量に応じて濃淡が変わってしまうので、自分で8%を超える調整ができません。このような視点からも自動車の運転には使わないほうがいいでしょう。
6-2.ビジネスやフォーマルなシーンで使用したい人
調光レンズは紫外線量が少なければ、クリアに近いレンズの色を維持できます。そのため、ビジネスやフォーマルシーンにも使えるのではと考えた人もいるでしょう。
結論から言うと、ビジネスやフォーマルなシーンでの使用は避けたほうが無難です。例えば、突然上司に「お昼ご飯を食べに行こう」と言われそのまま外出してしまうと、メガネがサングラスのように変化してしまう可能性があります。
また、結婚式などで野外で記念撮影をすると言われて外に出ると、レンズの色が濃くなってしまいます。冠婚葬祭では基本的にサングラスはマナー違反となるため、予期せぬトラブルにつながるかもしれません。
また、レンズの色の濃さは意図的に調整できないため、大切な場面で色が変化することも考えられます。調光レンズはサングラスとメガネのどちらを使用しても問題がないシーンでの利用を検討しましょう。
6-3.夏の日差しを和らげたい人
「1-1.色が変化する条件」で触れましたが、調光レンズは紫外線と温度によって色が変化します。温度が高いとレンズの色が薄くなり、温度が低いとレンズの色が濃くなる性質があります。夏と冬ではレンズの濃度差が20~30%程度あると言われています。
そのため、サングラスの需要と同様に夏の日差しを和らげる目的で購入すると、思ったようなレンズの濃さにならない可能性があります。
一例として上記のように寒い季節の紫外線量が多いシーンではブラックに近い濃さまで出せても、気温の高い夏の日は濃度が低くなってしまいます。
夏の眩しさを和らげる目的でサングラスを購入するなら、一般的なカラーサングラスや偏光レンズを選択したほうがいいでしょう。
6-4.眩しさを抑えたい人
「2.調光レンズと偏光レンズ・ミラーレンズとの違い」でも触れましたが、調光レンズにはギラつきや眩しさを抑える機能が備わっていません。
ギラつきや眩しさは光の乱反射が原因ですが、乱反射を抑えるにはレンズの間に特殊な偏光膜を挟み込む必要があります。
調光レンズには偏光膜が備わっていないため、レンズの色を濃くすることでしか眩しさやギラつきを抑制することができないのです。
- サイクリングやウォーキング時の道路の照り返しが気になる
- ウィンタースポーツやマリンスポーツ時の水面の反射が眩しい
- 釣りやゴルフをしているときの眩しさが気になる
という場合には、調光レンズではなく眩しさやギラつきを抑えることに特化した偏光レンズを選択したほうがいいでしょう。
7.調光レンズを選ぶときの3つのポイント
最後に、調光レンズを選ぶときのポイントを3つご紹介します。
満足できる調光レンズを選択するために知っておきたいポイントばかりなので、ぜひ参考にしてみてください。
7-1.レンズカラーに着目する
まずは、調光レンズの見た目と使いやすさを左右するカラーを選択しましょう。主なカラーには、下記のような種類があります。
カラー | 特徴 |
---|---|
ブラウン系 | 肌の色に近く馴染みやすいところが特徴。初心者でも取り入れやすい |
ブルー系 | 赤や黄色の色味をカットし、目を疲れにくくしてくれる。クールな印象を与えたい人におすすめ |
イエロー系 | 背景のコントラストがはっきりとして見やすくなる。暗いところでもできるだけ視界を明るく保ちたい場合に向いている |
ピンク系 | 視界が明るくコントラストがはっきりとして見やすくなる。血色がよく見える色味なので肌をきれいに見せたい人に向いている |
グリーン系 | 赤と青系の色味を吸収するため、目が疲れにくくなる。遠近感がはっきりするので、ゴルフや釣りに向いている |
グレー系 | 眩しさや明るさを抑えたモノトーンに近い見え方になる。どのような色にも合わせやすくコーディネートに取り入れやすい |
初心者でも扱いやすいのは、肌馴染みのいいブラウン系やグレー系です。見え方にも癖がないため、サングラスを使用したことがない人でも取り入れやすいです。
調光レンズをかけたときの印象を重視したい人は、ピンク系やブルー系が向いています。ピンク系は血色のいいかわいらしい雰囲気に、ブルー系はクールな印象を与えます。
また、アウトドアやスポーツで使いたいときはグリーン系やイエロー系も選択できます。とくに、グリーン系は赤色や青色を吸収し遠近感をはっきりとさせるため、ゴルフや釣りなどで使えます。
最も濃くなったときの見え方と色が薄いときの色味と見え方を確認して、自分に合うカラーを選択しましょう。
7-2.レンズの色に近い色のフレームを選ぶ
調光レンズの濃度が変化したときに違和感がないように、レンズの色に近い色のフレームを選びましょう。
例えば、ピンク系のレンズを選択したときに、ブラック系のフレームを選んだとしましょう。レンズの色が薄いときはいいですが、少しずつピンクになってくるとブラックとピンクがそれぞれ主張して、まとまりのない雰囲気になります。
ブラックのフレームを選択した際には同系色のグレー系のレンズを選べば、レンズの色が濃くなっても違和感がありません。
このように、レンズの色が濃くなったときに統一感が生まれるように、あらかじめレンズの色を基準としてフレームを選択してみてください。
7-3.初めての調光レンズ選びは眼鏡作製技能士に相談をする
初めての調光レンズ選びは、知識や技能がある眼鏡作製技能士に相談をしながら検討することがおすすめです。
調光レンズは目的や好みに応じて、最適なフレームやレンズの色を選択する必要があります。また、レンズの色の移り変わりや見え方の違いなどは、知識のあるスタッフに相談をしながら検討したほうが納得のいく選択ができるでしょう。
眼鏡作製技能士とは、眼鏡作製のエキスパートが保有する国家検定資格です。メガネに関する幅広い知識を有しているのはもちろんのこと、顧客のニーズや悩みに応じて世界に1つだけのメガネを仕立てるスキルを持ち合わせています。
- 【眼鏡作製技能士のスキル】
- 視機能や光学、メガネ販売や加工作製、フィッティングなどの知識
- 企業倫理やコンプライアンスに関する知識
- メガネ業界に関する専門的な知識
- ニーズをくみ取るコミュニケーション能力
- 顧客に応じたメガネを作製する測定・加工・フィッティング能力
- メガネの正しい装用や取り扱いを説明する能力
眼鏡作製技能士への相談は無料なので、自分に合うフレームやカラーに悩んでいる場合や利用するシーンに合う色を選びたい場合などは、気軽に相談してみるといいでしょう。
眼鏡作製技能士が在籍している店舗はこちらより検索できますので、ぜひ参考にしてみてください。
8.まとめ
いかがでしたか?調光レンズとはどのようなレンズが把握でき、自分に合うレンズか判断できたかと思います。最後に、この記事の内容をまとめてみると
- 調光レンズとは周囲の紫外線などの光量に応じてレンズの色が変化するレンズのこと
- ①調光レンズは紫外線の量と温度により色が変化する
- ②調光レンズにはレンズに感光物質をコーティングをするタイプとレンズに練り込むタイプの2種類がある
- ③調光レンズは紫外線に当たることで劣化するため平均的な寿命は2~3年となる
調光レンズと偏光レンズ、ミラーレンズとの違いは下記のとおり
種類 | 概要 |
---|---|
調光レンズ | 周囲の紫外線などの光量に応じてレンズの色が変化するレンズ |
偏光レンズ | 光の乱反射をカットするレンズ ※調光レンズには乱反射をカットする機能はない |
ミラーレンズ | レンズの表面に反射加工を施したレンズ ※調光レンズには反射加工が備わっていない |
調光レンズを使用するメリットは次の3つ
- 1本でサングラスとメガネの2役を果たせる
- 紫外線から目を保護できる
- 紫外線量によってレンズの濃淡が変化するためおしゃれな雰囲気を演出できる
調光レンズを使用するデメリットは次の4つ
- すぐに色が変化するわけではなく時間がかかる
- 紫外線を遮ってしまうため帽子や日傘との併用が難しい
- 感光物質をレンズにコーティングしている場合はレンズが傷つくと調光機能が失われる
- 経年変化で退色するため購入時の濃淡をキープできない
調光レンズが向いているケースは次のとおり
- メガネとサングラスの両方を持ち歩く手間を省き利便性を高めたい人
- サイクリングやウォーキング用のサングラスが欲しい人
- プライベートで使えるおしゃれなサングラスが欲しい人
調光レンズが向いていないケースは次のとおり
- 自動車の運転用のサングラスとして使用したい人
- ビジネスやフォーマルなシーンで使用したい人
- 夏の日差しを和らげる目的のサングラスが欲しい人
- 照り返しやギラつきなどの眩しさを抑えたい人
調光レンズを選ぶときのポイントが次の3つ
- レンズカラーに着目して選ぶ
- レンズカラーに近い色のフレームを選ぶことで統一感が出る
- 初めての調光レンズ選びはメガネに関する正しい知識と技能を持ち合わせた眼鏡作製技能士に相談をする
調光レンズは、紫外線量に応じてレンズの色が変化するところが大きな魅力です。利用するシーンや好みに応じて、長く愛用できる調光レンズを選択してみてください。

我妻 三朗 監修
店頭に並んだメガネは完成品ではありません。ご自分の目やお顔に最適に調整されて、初めて完成します。眼鏡作製技能士は、世界に一つのあなただけのメガネをお仕立てします。眼鏡作製技能士について詳しく見る。
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